構図がわかれば絵画がわかる/布施英利【著】

本書の著者は、東京芸術大学准教授の布施英利氏です。

同氏は「美術解剖学」なる学問の専門家で、以前に爆笑問題のニッポンの教養にも出演されていました。

 

本書の構成は以下のとおり、大きく4つに分かれています。

 

Step1 平面
 第1章 「点と線」がつくる構図
 第2章 「形」がつくる構図

Step2 奥行き
 第3章 「空間」がつくる構図
 第4章 「次元」がつくる構図

Step3 光
 第5章 「光」がつくる構図
 第6章 「色」がつくる構図

Step4 人体
 第7章 人体を描く
 第8章 美術解剖学

 

Step1~3までは、実際の有名な絵画(又は彫刻)を参照しながら、どのように構図が作られているのかについて解説されています。

 

例えば、「点と線」がつくる構図について。

ヨハネス・フェルメールの『牛乳を注ぐ女』と千住博の『ウォーターフォール』には、「落下する液体」が描かれているという共通点があるとして、液体の垂直線が持つ構図の意味を次のように明らかにします。

 

液体は、地球の重力によって落下しますから、その軌跡は垂直線を描きます。この2枚の絵では、描かれているのが牛乳や滝の水という液体ですから、それが「見えない重力」に支配されている線、方向性であることが分かりますが、同じく絵の画面に引かれた垂直の線は、それが落下する液体でなくても、地球の重力を可視化した線であり、私たちは、無意識でその線に秘められた重力を味わっているのです。(p.20-21)

 

また、「次元」がつくる構図については、角度によって空間や印象が違って見えるポール・セザンヌの『サント・ヴィクトワール山とアーク川渓谷の橋』を取り上げ、その謎を解き明かしています。

セザンヌは私が一番好きな画家で、高校時代には『エスタックから眺めるマルセイユ湾』の模写をしたことがあります。

 

その他、「色」がつくる構図では、かの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの『モナリザ』とエドヴァルド・ムンクの『叫び』を比較し、「色彩遠近法」という観点から、なぜ『モナリザ』が構図として安定していて、『叫び』は不安定なのかを解説しています。

私自身、「構図」というと絵の中の物の配置のことだと思っていましたが、色にも構図を形作る意味があることを初めて知りました。

 

さらに、本書ではピカソの絵についても様々な観点から解説がなされ、一見子どもでも描けそうなその絵の奥深さ、計算された構図の意味を知ることができます。

 

私は絵画が好きで美術館にも何度か足を運んだことがありますが、恥ずかしながら「構図」という観点から絵画を観たことはありませんでした。

最近では、子どもが小さいのでなかなか美術館には行けていませんが、今度行ったときは本書を参考に構図に着目して絵画を味わいたいと思います。

 

構図がわかれば絵画がわかる (光文社新書)

構図がわかれば絵画がわかる (光文社新書)